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第五回「ASPARK Owl」カーデザイナー大津秀夫氏 独占インタビュー

Updated: Mar 18

インタビュアー:真栄中美樹




 実現できたこととしては、技術的なところでは前述のインテリアパーツのほぼ全てと、外装のライトの内部などを3Dプリンター(光造形と粉末造形)で成形できたこと。



これは初の試みで、これまでは小さめな部品をこれらの製法で作ることはあっても、大きなパネルを丸ごと、しかもほぼ全てのインテリアパーツをこの製法でというのは、何か大きな問題が起きないか少しばかり心配しましたが、結果は予想を上回る良い出来で、精度はもちろん、表面の仕上がり状態も良く、納期も従来からは考えられない短さで、嬉しい驚きでした。私のようなものにとって実に良い時代になったものだと思います。


 シートのクッション材を5軸NC切削機で直接成形できたこともそうで、これは従来スキルの高い人がやわらかいクッション材を手作業で成形していたところなので、ある程度時間がかかるのはしょうがないし、精度も成り行きというかそれなりのもので、とにかく最終的に表面に張る革である種強引に形にする…というようなものだったのですが、これも速さと精度で納期短縮に大きく貢献してくれました。



 これらのことは、数年前からこうすれば出来るんじゃないかな…と思っていたことでもあり、今回必要に迫られてですが実際にやってみて、十分実用に耐える…どころか、従来の製法をほぼ全ての面で大きく上回る効率で高品質のものが作れることがわかり、それがショーカーとはいえ、ちゃんと車に組み付けられた状態で残る実績となり、見込みの正しさも証明できてある種の自信になりました。


 それから、インテリアに使ったオフホワイトのレザー(本革)を当初国内メーカーで手配していたのですが、メーカーと、間に入った業者の両方でトラブルが続き、使えなくなり、

(最初に選定してお客様にも承認してもらったものが、良く見たら量が足りなそうなので別のものにしてくれないかと言われ、何だそりゃ…と思いながら新たにカタログから選定しなおして、お客様からも何とか承認してもらったものが届いてみたらサンプルと全然違う色で、お客様に確認するまでも無く使えない。この発注に要した費用は弊社丸かぶり…。何なん?革関係の業者w)、

急遽東京の浅草(昔からレザーの卸問屋が多い)に直接仕入れる覚悟で現金持参で行ったのですが、残念ながら色と量の両面を同時に満たす現物は見つからず、ある輸入商社でイタリア製のサンプルの中から望ましいものを見つけてダメ元で納期を聞くと十分間に合いそうなことがわかり、急遽それをイタリア本国に発注、本当に間に合う、という“綱渡り”に成功しました。



 当初、納期や何か問題が発生した時の事を考えると、やはり国内メーカーのものが良かろうと思ってそちら方面にあたっていたのですが、国内メーカーの場合、色や風合いに限りが有って選択肢が少ない、それでも何とか選んで発注すると納期が1~2ヶ月(標準品で在庫があれば別)。それに対してイタリアのメーカーの場合、色も風合いも国内メーカーの数倍以上の選択肢有り、風合い豊かで質感とても良い、イタリアからの輸入にもかかわらず納期は最短で1週間強、長くて10日、価格は国内メーカーと同等かむしろ安い(輸送費を含む、決済はもちろん日本円で国内の銀行口座へ振込みでOK)とはどういう事なのか? さすがレザーの本場イタリア様、最高じゃないか。


 上記のトラブルが無ければ、そして自分で買い付けに行かなければこういう事は知らないままでした。このレザーの手配問題はある意味軽い修羅場でしたので、その時は本当に大変でどうなることかと思いましたが、自分で動いて実際に目で見てお金も使って得た経験は他では得がたいものでした。今度からはこのイタリアメーカーの見てるだけで楽しくなるようなサンプル帳(発注時に実費でいただいてきた)を見て、豊かな風合いのステキな色のレザーを注文しようと思っています。





 そして自分自身の変化、というのとはちょっと違うのですが…、

これの前にデザインしたIF-02RDSをデザインしているときから思っていたことがありまして、それはあの車のデザインは本物のレーシングカーにかなり近いもので、それは池谷さんが望んだものであり、そういうデザインが好きな人に向けて大きな魅力になるところでもあるのですが、それでも、もう少しだけレーシングカーから離れて、いわゆるスーパーカー側にほんの少し寄せたほうが良かったのではないかな…ということです。


 どの部分がそうかというと、ボディ側面の断面形状とフロントエンドの高さ。ボディ側面はフロントエンドからリヤエンドまで、平面に近いほぼ垂直な面がずっと通っているのですが、これはお手本としたレーシングカーがレギュレーション(車両規則)とエアロダイナミクス(空気力学)上の理由でこうなっていて、フロントエンドも可能な限り低く、横から見たらまさに地上数センチに浮いた楔(くさび)のようなことになっています。

池谷さんはその雰囲気をそのまま路上に再現することを望まれたわけです。


 池谷さんと私は好みがかなり近いのですが、ここに関してだけは少し違いました。私としてはフロントエンドの高さはともかく(保安基準を満たすためのヘッドライトのレイアウトなどは難しいのですが、低いこと自体は私も良いと思う。しかしながら、ここを上げられれば色々とデザインの自由度が増すので、私としては低いのがベストとは言い切れない…)、ボディサイドはもう少し断面形状に丸みを持たせた、いわゆる張りのある、豊かさを感じる形状にしたいと思いました。これは個人的な好みという事もありますが、商品性としてもそのほうが良いのではないかと思いましたので、そういう提案をしたこともあったのですが、それを見た池谷さんは“逆です逆です、この面はもっとシャキッと平面に近い方向でいいんです…。”とのことで、そのようにまとめたという経緯があります。


 そういう経緯で完成したIF-02RDSですが、全体的にはかなり好みのものになったし、池谷さんにもとても気に入ってもらえたので、これはこれで良かったのだと思いましたが、もしも次の機会があるのなら、この2箇所に関してはもう少し普通のスーパーカー寄り(フェラーリなどに近づく方向)にまとめたものにしてみたいなと思っていました。

そして、その“次の機会”は思いがけずすぐやってきました。アスパーク社の車はまさにそういうポジションにあるデザインにできたのではないかと思えるので、この車単体での完成度やデザインの魅力とは別に、そういう意味でも良かったなと思います。



 そして“変化”は、私ではなくて池谷さんの気持ちというか感じ方にありました。⑥のご質問の回答でも書きましたが、“自分はうちの車(IF-02RDS:赤い車)のほうが好みだと思っていたんですが…、これ見ると、やっぱりこっちもいいですね、いやぁカッコイイ…。”と言ってくれたのが嬉しかったです。やった!わかってもらえた、という気持ちです。自分が作ったもので喜んで欲しい人に喜んでもらえる、カッコイイと言って欲しい人にカッコイイと言ってもらえる、こんないいことは他にありません。


次回に続く


第一回「ASPARK Owl」カーデザイナー大津秀夫氏 独占インタビュー

http://tinyurl.com/y25z9b9j

第二回「ASPARK Owl」カーデザイナー大津秀夫氏 独占インタビュー

http://tinyurl.com/y5q7w38o

第三回「ASPARK Owl」カーデザイナー大津秀夫氏 独占インタビュー

http://tinyurl.com/y27zpg23

第四回「ASPARK Owl」カーデザイナー大津秀夫氏 独占インタビュー

http://tinyurl.com/y6bbheex

最終回「ASPARK Owl」カーデザイナー大津秀夫氏 独占インタビュー

http://tinyurl.com/yx8r6zkm


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